いつか声をあげるときに/ホロウ・シカエルボク
硫酸の雨を浴びたかのように傷むでしょう、世界にはもう、穏やかな場所などないのではないだろうか、と、わたしは度々考えました、ひとの心は地に落ち、ごみ捨て場を掻き回してわずかな食べ物を探すような卑しいものたちが当たり前のように生きている、上面の清潔さと真面目さを振りかざし、下劣な笑みを浮かべているのです、このようなものたちとともに生活を繰り返せば、ほどなく泉は枯れ果ててしまうことでしょう、わたしはあなたのあとで泉に手を浸し、その冷たさに愕然とし、しかしどこか安堵した、一見矛盾とも思えるそんな感覚を覚えながら、静かに、静かに、心の底へと沈殿していきます、まるで、稼働を止めた原子力発電所の中に降る灰のよう
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