彼女の明るさ/末下りょう
 
身体の肉がすべて牛の舌になったような気分の彼は、彼女の横顔を見ながら手を握りラブホテルに向かった。
あまり価格の高くない一室をパネルから選び、煌々とライトアップさせた部屋のベッドでお互いのからだを隈なく舐め合った。
彼女は明るく彼の陰茎をくわえ、彼は明るい彼女の暗い唇を、水を飲む犬のように舐め回した。


休み明けの彼女はいつもと変わらない明るさを周囲に振り撒き、今朝も笑顔でお茶を配り、狭い喫煙所で煙をくゆらせている。
物憂げな表情を見せることなく微笑みを浮かべて煙をくゆらせている。

彼は洞窟の惨めな獣になったような気分で小暗い廊下の壁にもたれながら、彼女の明るい髪の毛を眺めている。
テレビからはオリンピアンたちの雄叫びが響いている。

ぼくは休憩室のソファーに座り、埃を被ったリモコンを手に取ると 目的もなくザッピングを始めた。
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