ごく限られた世界の夜から昼への移動距離を並べて/ホロウ・シカエルボク
まだ誰の姿もなかった、もう夏も近いというのに少し寒ささえ感じた、風邪なんか引かなきゃいいけどな、なんて思いながら少しの間ベンチに横になってまともな眠りが得られるかどうか試してはみたけれど、そんな時に限って太陽がそそくさと顔を出すのだった、俺は眠るのを諦めて服を完全に乾かすことに専念した、雨続きの近頃にしては奇跡的なくらいのきちんとした晴天だった、二時間で服はカラッカラになった、俺はひとつため息をついてから家に帰ることを再開した、あとどれくらい歩けばいいのか見当もつかなかった、いつもは電車を使うからだ、でもまだ電車の動く時間じゃなかった、人並みの人間が人並みに動き始める時間になるまではまだしばらくあ
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