午後 山は飛び ひとりを歩み/木立 悟
 






硝子が
黒く空をゆく
映るのは音
変わりゆく音


真昼の霊が幾つかの影を
円く短く
花のかたちに置いてゆく
笑う背中に乗せてゆく


手足の指が
痺れるほど何も無い地
地 水の地
地へつづく地


暗い明るさ
昏さ 昏さ 
伏した目の高さ
滴の先


径に降る羽
しんしんと呼ぶ声
水は午後
水は土


数式の樹に咲く花が
煉瓦の径に散り急ぐ
手風琴とさざ波の
はざまの音たち


階段の何段めかで
花は待っている
踊り場の窓はむらさき
渇いた鳥の声もする


まばたきの度に傷つく水晶
白く
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