ボロ布のようなマリア/ホロウ・シカエルボク
 

雨こそ降りはしなかったが、街はどんよりとした雲と湿気に満ちていた、人と擦れ違うのが煩わしくなり、小さな道へと逃げ込んだ、歩いているうちに、その先に昔、数十年は前に、死に絶えた通りがあることを思い出した、数十メートルの間を数軒の商店の廃墟が並び、最後は潰れた家屋で行き止まりになっている、どちらにせよ、家屋の向こうで厳重に封鎖されているのだけれどー確かこちら側の入口も封鎖されていたように記憶していたが、もう何年もそのあたりを歩いていなかったのでよく思い出せなかった、あちら側とこちら側の風景が混在しているのかもしれない、そしてそれはいまとなってはもう確かめようもない、向こう側の封鎖ゲートのその先は、
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