微風・反転・漏出/ただのみきや
漏出
おれはおれの過去から赤錆びた一振りの剣を掘り出した
やっと青銅から鉄に変わったころ
八方世界は未知に満ち
心は夜と昼を合わせた以上に迷信であふれていた
そんな時代に埋められたぼろぼろの剣
おれはそいつを打ち直す
ああ明後日からおれの伽藍洞へと
知性の欠片もない野蛮な風が吹いて旋風(つむじ)を巻いている
燃やすものも燃えるものもありゃしないが
手あたり次第にくべればいいさ
言葉もサイコロも心臓も標本も朝焼けも
真珠を孕んだ美しい姉妹たちも掛け軸の中の鐘の音も
位牌も臍の緒も一切合切躊躇(ちゅうちょ)するな燃やしてしまえ
ナ
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