微風・反転・漏出/ただのみきや
 
微風

うすくなった髪をそっと撫で
朝の風は水色の羽ばたき
幼い接吻
この目が見えなくなっても
耳の底が抜け
全ての言葉が虚しく素通りし
鳥の声すら忘れてしまっても
変わらずにそっと訪れる
やさしい仕草
永遠の少女
すべての嵐と破壊の母よ





反転

青草が鉛より重い虚空をくすぐると
蟻の巣穴から死者の吐息がもれた

蒲公英(たんぽぽ)をちぎる手を嗅いで
少女の肌の日陰をさまよう犬

にわか雨に匂う菖蒲 喪服の女
隠し事を濡らす間もなくバスは来た

ギザギザの虹に苛まれた眼球
唇にあてた貝殻から濃い 遺跡の影

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