河を渡る/塔野夏子
蒼ざめた霧が流れる
旗は透明
静止
巨きな空虚
渡るべき河の音
静止の中を
巨きな空虚の中を
いくつもの星が通過する
見える星
見えない星
蒼ざめた霧のつめたさ
静かに歩きだす
透明な旗のふちが
仄かに遊色する
渡るべき河は近い
祈りではなく
祈りよりもまっすぐに
立ちのぼる何か
巨きな空虚の底に
灯るあらたな覚醒
この河を渡る
見える星も
見えない星もついてくる
向こう岸を知らない
けれど
この河を渡る
透明な旗をかかげて
あらたな覚醒を灯して
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