つぶやかない(四)/たもつ
 

外野を抜けた白球を追って走る
走者が一掃して
試合が終了しても
ひたすら追いかける
悲しみも寂しさも
ただの退屈だった
人の形を失っていく
それでも最後の一ミリまで走る
(午前7:25 ? 2021年4月19日?)


ビーカーの中に
夜が落ちた
何も量れないように
目盛は消しておいた
そっと手
物も事も普通にある
(午前8:04 ? 2021年4月20日?)


私が私だったころ
私はまだ私のことなど知らなかった
ただ無邪気に
私は私だろうと思っていた
いつ私は私になったのか
私にはわからないし
私にはわからなかった
気がつくと私は私では
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