この夕暮れが/ただのみきや
 
哀しみあるいは悲しみを
膝の上に乗せて
よく眠ってくれるから
ひと時煙をくゆらせるように

ギザギザした鍵を
胸に刺したり抜いたりして
酒と音楽でにじんだ幻を孵したい
ああこの夕暮れが永遠なら

観客のいないサーカスのような人生だった
天国と地続きのような人の笑顔も見た
おどけた音たちが心の被膜を滑る
ああこの夕暮れが最後なら



             《2021年4月7日》







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