表現と表現者の領域 −詩人たちの末裔 ?/アラガイs
20数年も前になるだろうか。たまたま帰り道に寄った駅ビルの居酒屋で、長い木目調のカウンターに腰掛け、惣菜のつまみをちびちびと頬張りながら熱燗を?んでいた初老の男性と話したことがある。最初は遠慮して二席離れて座っていたのだが、( ああ、疲れましたね…)ふと彼のほうを見て発した私の一言が彼との距離を一気に緩めた。
駅に到着する数時間まえ、街の中心を行き交う人々はプラカードを掲げ練り歩くデモ隊に遭遇していた。多くは隊列を整え、照れ笑いを浮かべながら覚束ない足もとで歩道を歩いていたのだが、後ろから下がるに連れ、その多くは歩道から逸れて道路の進行を妨げていた。そのため街には大勢の警官や見慣れない機
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