フラミンゴ酒/ただのみきや
 
絶命譚

 首の長い鳥の群れが土手の向こうへ降りて行く

旅人とは旅の途中で命を落とす者

どこで生まれてもどこで育ってもそこは故郷ではなく

どこに辿り着いてもそこは目的地ではない

まだ知らない見たこともない

地平の果ての何ものかへ

素粒子のように帰依する時

忘我の汀に開く幻の都か

 肢の短い鳥の群れが次の寄留地へ渡って行く

故郷を語れる者は旅人ではない

磁針はあっても地図を持たない者

めくるめく偶然と運命の錐揉みの果て

名詞を持たない何ものかへ

蝶のようにあっけなく

風に焦がれるエトランゼたち



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