詩の日めくり 二〇一五年十一月一日─三十一日/田中宏輔
はっきりと、ぼくの耳は、ぼくの耳が聞くもののことを聞くことができるのだ。詩が、ぼくの手が触れるもののことについて語ってくれるので、よりはっきりと、ぼくの手は、ぼくの手が触れるものを触れることができるのだ。詩が、ぼくのこころが感じるもののことについて語ってくれるので、よりはっきりと、ぼくのこころは、ぼくのこころが感じるものを感じることができるのだ。詩が、ぼくの頭が考えるもののことについて語ってくれるので、よりはっきりと、ぼくの頭は、ぼくの頭が考えるもののことにについて考えることができるのだ。詩が、ぼくに、目を、耳を、手を、こころを、頭を与えてくれたのだ。詩がなければ、ぼくは、目を持たなかっただろう。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(16)