詩の日めくり 二〇一五年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
記憶力のなさに驚かされた次第である。めちゃくちゃ有名な詩なのにね。

 ところで、帰りの電車のなかで、「濡れた黒い」と「黒く濡れた」では意味が違うのではないかと思った。木の枝が雨に濡れたかなんかして、水をかぶると、灰色だった枝まで黒く見えることがあるけれど、さいしょから黒い枝もある。濡れて黒いのか、黒くて濡れたのか、どっちなんだろうと思って、帰って部屋で原作の英詩を調べた。

IN A STATION OF THE METRO

The apparition of these faces in the crowd;
Petals on a wet, black bough.


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