詩の日めくり 二〇一五年十一月一日─三十一日/田中宏輔
かなりむずかしそうなので、祖母の見た経験を使おう。祖母から直接に聞いた話ではないけれど、生前に、父親が語ってくれた話で、戦前の話だ。祖母の、といっても、父親がもらい子だったので、ぼくとは血のつながりがないのだけれど、祖母の兄がやくざのようなひとで、じつの妹を(祖母ではない妹ね)中国に売り飛ばしたりしたらしいのだけれど、妹のひとりが間男したらしくって、その間男を風呂場に連れていって、指をアルミ製の石鹸箱にはさませて、踵で、ぎゅっと踏みつけて、指を飛ばした(こう父親が口にしてた)のだという。指がきれいに切断されていたらしい。たしかに、ペンチかなにかで切断しようと思うと、手の指の力でやるしかないけれど、
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