くそみたいな世界でお茶を濁す的なちょっとしたかきなおし/よんじゅう
れる_振り返るとせり上がった家並みに浮かぶ_エンジンの搭載されていない六畳一間の船底に_大波で遭難したきみが眠っている_今夜も朝方まで救難信号を送っていた_ぼくはひるがえり_砂のひとつも色のない波打ち際まで駆け降りる_おもちゃの漁船が水平線でハイウェイと交差する間際_釣り人に釣り上げられて岬の向こうでふいっと消えた_しらみはじめた空で解体された星座群がそのあとを追う_夜が溶け墨汁のような海に_ぼくは飛び込んだ。
指先にひっかけていたハイカットから点々と海の匂いを垂らしながら帰ると大家さんに見つかった、きみのポークビッツをかじるイメージで、大家さん、おはよう、砂まみれのジーンズとTシャツを流し台に放り込んだら、どこにも飛び立たない旅客機は疲れ切っていた、この小さな部屋に七月が溢れて息もできない多くの蟹が、船底で泡をふいている。
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