ひとでなし/墨晶
 
         - Der Traum, wieder 
一瞬で、どんな夢だったのか忘れてしまうが
胸が潰れるような氣持ちのさなか目覺める
かたちのないもの
かんがえにならなかったもの
ことばにならなかったもの
いつもそれらに訣(わか)れを云えなかったことは
もうこれまで多く、大切だったものを
とうになくしてしまっている筈なのに
わたしにとって大事なものがまた
それが何だったのかを氣付かせないように
わたしの元を立ち去って行ったかのようで
ひたすら悔いとなって
身勝手な痛みのようにしばらく心肺に取り憑く
だからいつも寢牀(ねどこ)で
半身を起こしたまま放心している
 
 
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