反省なんかしない/ただのみきや
 
焼香

鶫(つぐみ)を威嚇する
鵯(ひよどり)の
声は形より
広々とこまやかに
震えた
春の微粒子
住宅地の雪解け水を
長靴で測り
黒いコートに受ける
日差しをありがたがって
祈る鼻歌
蜜柑ひとつ分
透明になった
気まぐれを
気まぐれのまま
窪みから仰げば
歌の階(きざはし)は
高く崩れ
もう結べない
昨日のように
脱色されている






肉体

雨風に弄られて生きるものもあり
朽ちるにも様がある
春に迷い出た
枯葉ひとつ
風のリードにきりきり舞い
雪解けの暗い水に
冷やかな天の額
命ほど
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