詩の日めくり 二〇一五年十月一日─三十一日/田中宏輔
、京都中のカメラマンをアゴで使ってはるんですよ。」って言ったら、すぐさま、そのカップルの女性の方がマスターのほうを振り向いて、「あご?」と口にされたのだけど、ぼくは笑いをこらえるのに努力しなければならなかった。なんにもなかったような顔をして洗い物をつづけた。その女性の方、アゴがちょっと(いや、ずいぶんかな)出てらっしゃったのだ。人間って、自分が気にしている言葉には敏感に反応するんやなあと思った。あとで、えいちゃんに、その話をして、二人で笑ったけど、そのときには、絶対に笑ったらあかんと思った。おもしろかったけど。だって、吉本新喜劇の一場面を見てるみたいだったんだもの。女のひとがすかさず横を向いて、「
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)