間違っているのはあなたの方/妻咲邦香
 
この勲章はまだ血の味を知らない
群がる民衆
違和感のお陰で拍手で迎え入れられた
長い廊下
リノリウムを蹴った数だけ痛みをかき集め
何もかもそのつもりだけで生きて来た
握る鉄棒の冷たさ
指紋の渦に錆の飛沫を刻んで
あんなに高く見えた屋上の貯水槽
今はどうしようもなく頼り無い
いくつもの秘密を埋め込んだ体育館の天井
複雑に組まれた屋根の骨組みの何処かで
別れて行った私と私
あっちこっち
星座を結んだ線が夜の空を支えてくれていた
今はもう見つけられない
迷子になった私が増え過ぎて
燃えかすになりそうに渋滞してる
水溜まりが明日には染みになって
明後日には消えていくように
私の中ではそれが正解
いつかこの仕掛けが作動して
間違い切れない人々の中で
音もなく
発火しますように

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