虹とソラリス/妻咲邦香
塩気の足りないマリネ、お酢を足してみたけど
しょっぱくなったかしら?
背中越しのOKサイン、その向こう側の景色を見ている
話し方を変えてみても他人にはなれない
私の匂いは私に同化してるから
いくら愛されても価値は増えないし
誰にも増やせない
虹が消えていく
虹が消えていく
私が渡る筈だった虹が
引き出しの奥で絡まる夏服のように
青臭さの飛沫浴びながら抱き合った
時の結び目の外し方を覚え、知り過ぎた鳥かごの外
子守唄が聞きたくなって駄々をこねた
この星は何もかも手触りを隠すのが下手で
気紛れな台詞も投げ遣りな手も
優しかった、いつまでも
虹が逃げて行く
虹が逃げて行く
私が追いかける筈だった虹が
次にあなたを好きになる時はきっと
無茶苦茶に溺れるから覚悟しておいて
アクセル踏み込む爪先から伝わる振動
一体誰に逆らって生きているのか
わからなくなる、今一度
虹が消えていく
虹が消えていく
私が渡る筈だった虹が
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