黒猫と少年(7)/嘉野千尋
 


  *手紙


  古びた手紙の束を、抽斗の片隅に見つけた。
  色褪せた切手の上の消印から、
  少年は手紙を受け取った日のことをぼんやりと思い出す。
  その日は朝から雨が降っていた。
  滲んだ宛名書きを、そっと指でなぞりながら少年は机に腰掛ける。
  紫陽花の花陰で、あの人は泣いていた。
  そう、あれは黒猫と出会う前のこと・・・。
  少年は黒猫の寝床に、つい、と目をやった。
  かすれた花柄のブランケットだけを残して、
  黒猫はいつのまにか姿を消している。
 「どこに行ったんだろう」
  少年は小さく溜息をついて、手にしていた手紙を折りたたみかけた
[次のページ]
戻る   Point(4)