出世したい来世/入間しゅか
 
を開かないと出世できんのですね

さんざん血を吐いておりまする
早う来世で鯵になって食われとうございます






……と立ち止まると太陽。街を容赦なく叩き起こす太陽。ぼくには朝焼けが眩しすぎて痛い。駅まで徒歩20分。ぼくは呪文を唱え続ける「……にあらず。我思うゆえに……にあらず」
人生が馬鹿みたいに美しくて、どうしようもなく虚しいものなんて知ってるよ。出世したって仕方ないことくらい知ってるよ。でもね、ダメなんだ。小学生のとき、牛乳をこぼしたのがぼくの始まりだと思うんだ。給食の牛乳が床に広がっていくのを黙って眺めていた。白いそれは隣に座る井上さんの机の脚にたどり着いてもなお
[次のページ]
戻る   Point(10)