カップラメーン/妻咲邦香
 
碧を握り締める
私は誰を導けるだろうか?
古城の砦、苔むした砂塵が間近に迫る
まだ乾かぬうちの彫像に意匠が掲げられ
思わず嘴を捧げてしまった

解読不能のサルタラン
近似値は門番だけが知る
ベクトルを杖に教典を掘り進む
   (およそ熱湯を注いだ時点での)
命綱を手放す者もいる中
引き金でしか戦い方を知らなかった
空席が目立つ
薄暗い塹壕で介錯を申し出るも
手元が見えない
救えるのは私だけで良かった

淡い紅を握り締める
誰の視界からも死角となるよう
握り締めている
神話から解放された星座が梯子を伝って降りてくる
オーロラたちの無慈悲な交渉
脱げない鎧は無数の矢を受け止めるしかなく
私は誰を裁けるだろうか?

  種に従い栄えよ
  野に新雪を知らしめよ

補給路を断たれ輸送機を見送る
ひたすら青が滲む
波間に竜の背中、とうに消え失せたか?
蓮の安らかに項垂れる
私はオールを手放した
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