サン・トワ・マミー/ホロウ・シカエルボク
 

きみは遠い世界の春を抱いて、シャンソンに合わせて身体を揺らせている、昼間は夏のように暖かかったけれど、夜は北極のように凍りついている、電気ストーブよりもいくつもの薪をくべた暖炉が欲しくなる、そんな寒さだ…おれはもう何度目かの「ベイビー・ブルース」を読みながらウトウトしていた、物語の気怠さにのせられたわけじゃない、まともな人間はとっくにパジャマに着替えてベッドの中で夢を見てる時間なのだ、でもきみに言わせればおれもきみも漂流者みたいなものなので、そういったしきたりには関係がないらしい、しきたりの問題ではなくて習性の問題だとは思わないかねとおれは一度反論してみたけれど、「そういう話をしているわけでは
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