同一テーマにおける3つの変奏「てがみ」/すいせい
の絶えないように
ゆきまじりの風のふく丘で
小さなしろいろの手が繁茂する
誰も知らない曜日が
つぎつぎに割れていく
そして結ばれるあらたな祈り
心にもない水音が
ひときわ輝いて
開けなかった一葉のたよりを
握りつぶした
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ことばでふれることなく
ひとつ落ちた果実
父に似た花梨の実が坂を転がり
水門につく
小さなやわらかい
しろいろの手がやさしくだきとめ
その願いを日曜日として囁いている
丘の上には古い公園があり
遠くには海が見えたはずだ
雪まじりの風が粉砂糖のように仕上げた
ゆびきりとため息の城
背を軋ませぬかるみに
あしをとられながら
それでもゆっくりとのぼる
春になったら
と破った日記のしたでほほえむ
きみの手もとてもしろくて小さくて
結ばれるなんの変哲もない日への
ゆびきり
水音のいっそうかがやく先へ
そっと吹き込んで
それでもたしかに刻まれてゆく
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