詩の日めくり 二〇一五年二月一日─三十一日/田中宏輔
 
笑ったのじゃなくて
またすぐにその笑顔は引っ込めたのだけれど
だって
ひとりで笑ってるオッサンって不気味じゃん
みんながぼくに似ている
ときどき
ぼくがだれに似ているのか
そんなことは考えたこともないのだけれど
まあ
ぼくもだれかに似ているのだろう
おそらくぼく以外のみんなが
どことなくぼくに似ているのだろうし
ぼくもぼく以外のみんなに似ているのだろう

ときどき ぼくは ぼくになる

と書けば嘘になるかな
リズムもいいし
かっこいいフレーズだけど


人間だけじゃなくて
たとえば
スプーンだとか
はさみだとか
胡椒の粉だとか
練り歯磨き粉だとか
そんなものも
ぼくに似ているような気がするんだけど
ぼくも
いろんなものに似ているんだろうな
橋や
あほうどりや
机や
カバンや
木工用ボンドとか
いろんなものに
もともとぼくらはみんな星の欠片だったんだし
チッ
光と熱だ
でも
そのまえは?



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