雪と阿片/平井容子
 
いつか死んでほしい人のための家路ほど
悲しいものもない雪夜でした
窓のあかりとうなるボイラ
湯をあびるひとの気配
耳なりのむこうのやわこい声
わたしは悪党だったから
全身が指先みたいにかじかんで
笑えてしかたがなかったな
あまりにも白っぽいから
そこが夜のそこだと気づかんうちに
みんな眠ってしまうのでしょう
くしくしと
ふみしめ粉雪をかためて
ゆめへとおりていく
ひとりゆくみなそら、
かつてわだかまったものの
むねのうちゆきよ

戻る   Point(8)