野球場の夢/服部 剛
令和三年・一月三日
三が日の間に息子孝行しようと思い
周(しゅう)の小さな手を引いて
川沿いの道をずんずん、歩く
野球場の芝生を
解放していたので
そのまま手を引いて
ずんずん、入ってゆく
たたたっと走り出す
少女の手から、糸を引く
飛行機型の凧は揚がり
少年はサッカーボールを蹴り
父親と青年はキャッチボールをして
グローブで球を取る、乾いた音が
正月の青い空に響いた
――羨(うらや)ましいなぁ
九才で言語を知らない周の
パパである僕は声もなく、呟く
正月の野球場は
無数の家族に彩(いろど)られ
二度目の緊急事
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