ちっぽけ/田中修子
 
薇の、灼けつくような紅葉を
さらさらと和紙に写していくだけの
わたくしどもは、番人、
白い野薔薇をのぞき込んだら、真珠がいたよ
喪われた人の、呼吸たち

 ここは これでいい

幸福の青い鳥が二羽、囀りながら飛び交っていて、
いくら食われてもなくなることのない、水死体をついばみ、
糞から種が落ち、そうして花々が咲き
白い野薔薇に巣をかけて

 どこまでも生態系だ。こうもりの咳だ。みンな、九相絵図だ。

淡い紫にも見える、灰色の雲がやってきて
青と金の破片を降らせる雨なんです。
「佳雨(かう)だね」「さうです」ふふ、

雲の上には金の星を抱いた夜空が果てのない、
わたくしども死んだらすべて巡りゆくのです、
人が喪われたとて(百年後には忘れられている、肺の弱い、わたくしのいき)

 この輪廻に抱かれ
 ちっぽけ。
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