夕暮れシャッター/田中修子
みくだして倒れる
もう書かれることのない
ノートをひらく指はずいぶんと
乾いてしまった
鴉がシャッターにぶつかり
たたく音だけが
ひたすらに品のない雨のように
わたしの心臓をいまだ
うごめかせる
あしたもあさってもしあさってもそのさきも
わたしの恋人を埋葬しつづけ
間に合うように十分進ませてあるうちに
数十分数百分狂ってもう
何時かもわからない時計を眺め
夕暮れシャッターを下ろし続けるだろう
いつのまにか椅子の足は
八本になって
絡みつき
あるはずのない曜日になっていた
数万の鴉に覗き返される
すき間から覗く
長い歳月に濁っているわたしの
もう白くはない
白目
---
某サイト投稿作品
戻る 編 削 Point(3)