夕暮れシャッター/田中修子
 
みくだして倒れる

もう書かれることのない
ノートをひらく指はずいぶんと
乾いてしまった

鴉がシャッターにぶつかり
たたく音だけが
ひたすらに品のない雨のように
わたしの心臓をいまだ
うごめかせる

あしたもあさってもしあさってもそのさきも
わたしの恋人を埋葬しつづけ
間に合うように十分進ませてあるうちに
数十分数百分狂ってもう
何時かもわからない時計を眺め
夕暮れシャッターを下ろし続けるだろう

いつのまにか椅子の足は
八本になって
絡みつき
あるはずのない曜日になっていた

数万の鴉に覗き返される
すき間から覗く
長い歳月に濁っているわたしの
もう白くはない
白目

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某サイト投稿作品
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