空論のカップに口を付ける冬の横顔/ただのみきや
 
銀杏一葉

フロントガラスのワイパーの圏外
張り付いた銀杏一葉
冬の薄幸な日差しに葉脈を透かして

用途を終えて捨てられた
ひとひらの末端 美しい標本
飛び立つことはないはずなのに

いつのまにか消えていた
夢から迷い出たきいろ
蝶の幽霊





鳩と座敷牢

肉叢を揺らしながら
前のめりに近づいて来る
玉虫色の首
乾いた胡桃のリズム

  紫の袱紗に包まれた
  ロザリオをとりだして
  額の上に吊るし持ち
  カリカリと噛み咀嚼する

見えたものしか見ない
嵌め込まれた赤い目は
なにも表現しないことで
汎用性をまと
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