嬋花/あらい
 
炎天下の発情。
 痘漿の裂傷、
 打ち据えた鈍らの刄溢れ
 貪欲な腹を割って、離す
 
聴き入れられない数万の蛍 
ちかぢか 燃ゆる
 砂糖腐菓子が水辺で憂いて
  そのうち融けている
プリズムに凝固する 
 「生まれ変わりを知ってるよ」 
   きみがいうのだろうから
 口ずさんだは死に損ない、
  それは風前の虫の息 かつての燈籠の炎も
消え失せる刹那。
 不死鳥が羽ばたいただけの
 (延命治療といって)
 
 木の齢 好い質した痕
 あと いちまい、枯葉散らないまま
 あゝ 呑み下せば善かったのに、ね
 神の息吹とも 悪魔の囁きとも、
 準えるは 冬虫夏草の渇望
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