SF/佐々宝砂
ふわ
ですらない
吐き出そうにも吐くものとてなく
そもそも吐き出す口もなく
からっぽだったときのほうがまだ
少なくとも何かではあったのではないか
逡巡していたら
SFがまた落ちてきた
サイエンスのSじゃないですよ
スペキュレイティブのSですよと宣うのだが
それだってもう古いだろ
知ってるぞとつぶやいたら
ならSci FiのSですよとにっこり笑う
いや違うだろ
Sは私の頭文字だ
少し寒くなってきた夜半の窓に
眼鏡をかけた顔が映っている
あれは誰だ
からっぽですらないはずの
しかしそこには肉体があって
SFはこんなとき役に立つのだろうか
立つだろうよ
SFはまだ死にはしないだろうよ
この肉体が機能を停止するときも
戻る 編 削 Point(1)