天使たちの羽化/st
 
水を吸って
重たくなった

スポンジのような

どんよりと
ひろがる雲


北国の
曇り空は侘しい

落ちてくる
雪は
雲の涙の粒のよう


となりで読書しているきみに
話しかけてみる

これから
冬のおわりまで

うっとうしいね
この天気


きみは答えて


東京の
カラカラとした青空は

まぶしくて
嫌いよ

北国の青空は
めったにないけど

しっとりと輝く
ダイヤモンドのように
とても好きよ

という


循環する
地球の命の水


海で生まれた
純水は

天使のように
舞い上がり

冷気に触れて

美しい結晶に
羽化する


天使たちは
汚れた世界に
舞い降りて

すっぽりと
覆いつくし

雪解けとともに

地上を浄化しながら
また
海へもどる


なんてよくできた
システムだろう


うっとうしい曇り空が


愛おしくなった




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