ほんの、少しだけ濡れた/ホロウ・シカエルボク
 

忌々し気にジャングルブーツでガードレールを蹴飛ばした女を横目で見ながら今夜の行く先を探してる、夜は突然に身も凍るほど寒くなり、そしてポケットには僅かな金しかない、一時間でいい、ほんの少し腰を下ろして、疲れた身体を休めることが出来るところを思い出したい、だけど疲労は記憶喪失を連れてくる、俺の脳味噌はストライキを起こしてる…通いなれた道を異邦人のように歩く違和感、思えば俺の人生は違和感ばかりだったな、合せる辻褄を探すべきだったのかもしれない、でも俺はそんなことに興味がなかった、詩と、音楽と、ほんの少しの欲望、そんなもののためだけに生き続けてきた、人生に確かなものが欲しかったのは多分三十代くらいまで
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