初恋のようなもの/板谷みきょう
 
初めて「結婚したい」と
思ったのは16歳の時だった

別の町に住む
別の学校に通う
一学年上の女性だった

狸小路の階上喫茶で
話し合ったり
季節外れの浜辺を
散歩したり

「あたし一生、結婚なんかしない。」
「それじゃあ。ボクが貰ってあげるよ。」

その言葉を果たせぬまま
あの娘は
卒業してしまった

『閏年の夜9時に、電話を掛けます
二度と会うのが嫌なら
電話に出ないで下さい。』

そんな手紙を送って
閏年の夜に
持っていたお金を全部
十円玉に交換して
公衆電話から電話を掛けた

ドキドキしながら
ダイヤルを回し
二度のコールで電話
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