からっぽの夜/ホロウ・シカエルボク
ため息をついたが
誰のせいにするつもりもなかった
背後の
朽ち果てた家屋から
野良猫が走り出た
おれたちを
警戒していたのかもしれない
時折振り返りながら
すぐに闇に溶けた
そうさ
あれはどこかへ行ってしまったわけじゃない
ひとりで走り出そうかと思った
そのまま
眠ってしまいそうなおまえのことを置いて
闇の中で
消えてしまおうかと、そんな
ふざけた気分を
知られてやろうかとわざと笑ったが
おまえは
気にしはしなかった
寝返りのように
首を傾けただけだった
遠い闇の中で
さっきの猫が鳴いている
住人の消え失せた部屋の
目覚まし時計のように
動く
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