ここは家ではない(らいこう28)/れつら
させられる
ここは家ではない
さらに眩しい場所へ
さらに広い場所へ
乗り物は自動的に進んでいく
風景は時折、黒く区切られ
闇の中でもランプが光線を描く
ここは家ではない
乗り物には無数の窓がある
それぞれの窓には顔がある
ひとつの顔も 複数の顔もある
窓の外にも異なる窓があり顔がある
中には自分の顔もある
顔がないものもいる
声だけが聴こえる場合もある
声すらない者もいる
ここは家ではない
ただ文字が陳列され
その録音が響いている
約束を守ろう
という声が、風が吹くたび
色を変え、輪郭を変え
翻る
元のかたちを忘れ
風に、吹かれている
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