BURN/ホロウ・シカエルボク
と姿を変えていた、けれど、血液や体液のぬめりは俺にとって好都合だった、身体はさっきまでよりもスムーズに動かすことが出来るようになっていた、俺はもがき、ときに視界を完全に失いながら、ようやく陸地に辿り着いた、虫どもはそこからは追ってこなかった、あいつらの役割はあくまでも水なのだろう、砂浜に大量の液体を吐いた、子供の頃遊んだスライムみたいな吐瀉物だった、体温が急激に下がり、俺はしばらくの間そこにうずくまって震えていた、おおお、と、理由の分からない叫びが口をついて出た、一度出てくると止められなかった、喉から血を吹き出すまで俺はそこで叫び続けた、虫どもは高波のようにうねっていた、俺は叫びながら陸地を駆け上がり、高く、薄っぺらく、頑丈な壁を超えた―そこは高速道路で、血塗れで立ち尽くす俺を様々な車のドライバーが驚いた顔で眺めて行った、やがてパトロール・カーが現れて、二人の警官が俺を取り囲んだ、彼らが口々に言うお決まりの質問を聞き流しながら、俺はどこまでが俺の世界なのかということについて考えていた―きっとまだ毒が抜けきっていないのだ、俺は目を閉じて、その場にくずおれた。
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