フロントガラスにちいさな蝶が止まった/ただのみきや
 

知恵らしきものを錯覚させる絶対無知の一滴よ
呼び覚まされる羽衣は水面から軽やかに大気を捉え
彼岸花で覆われた遠い町
金属色の犬に噛み裂かれ
記号化された半神たちに何度も犯されながら
穏やかな人形たちの暮らす町を目指すのだ
生まれてから朽ち果てるまで変わることのない
人形の人形による人形のための尊厳死制度
肉体を記号に記号を肉体に変えながら
一対の生の読み札と死の取り札が巡り合う時の
現れては消える扉
女の瞳の奥
わたしはその女の家であり墓であり
女はわたしの鍵であり真空だった
地軸がずれたかのように
なにもかもが斜めに倒れる刹那
上昇か落下か
悩んでも決して
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