フロントガラスにちいさな蝶が止まった/ただのみきや
そう言うと白熱球を飲み込んで顔全体を暗い照明器具に変えてしまった
漁師は怒鳴る「稲藁焼きにした溺死魚が焦げちまったじゃあねぇか! 」
医者がメスで魚の胎を裂くと真砂のような文字が溢れ出す
客たちはルーペとピンセットで各自の皿に並べて往く
緻密な作業に互いの存在を完全に忘れ去り
病気で羽根の抜けた鶏のよう
目つきだけが鋭くなり目の前のこと以外は無であり空だった
だが目の前にあることだって夢であり空
火の粉が弾け小屋に燃え移っても誰も夢中で気が付かない
いよいよ火が小屋全体を覆うと屈葬された白骨が立ち上がった
伸びをして悠々と辺りを見渡し 視線に気付くと軽く会釈をし
火炎の
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