歴史/千波 一也
 

だれの支配も干渉も同調も
必要としない世界が
ほんとうだった
図らずも
迷いや孤独や弱弱しさが
ほんとうの世界を支える柱を
少しずつ
変えていったのだろう
ささいな始まりが
時を味方につけて
今では
すっかり大きな柱になったけれど
始まりは
ほんのささいな
生きものらしさだったのだろう

間違え続けることが
命あるものたちの習わしなのだろう
その誤りを
その過ちを
繰り返し続けることも習わしなのだろう
繰り返すまいと抗うことも習わしなのだろう
どちらが優れた生きものかと
競うことも
推し量ることも
天秤にかけてみることも
まったく自然な流れであって
その流れを
一筋に決めてしまおうとして
ほんとうに
一筋にしてしまったことが
習わしを外れた
諸悪の根源では
なかろうか

聴こえるものと聴こえないもののすべてに
この歌を
視えるものと視えないもののすべてに
触れるものと触れないもののすべてに
この歌を
知り得るものと知ること叶わぬもののすべてに
この歌を







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