19歳の不安/七尾きよし
て男の声が青白い顔をした男がにやりと笑って・・・と続ける。 女はどうしてと言い、男はさよならと言う。 すべてが一とおり行われるとまた老人の声が不安とは・・・・・・と繰り返す。 男がにやりと笑って、どうして、悲しい? 一人にしないで 不安とは・・・ 嫌だ! 君を愛してる 一人ぼっちで・・・ 不安とは・・・・・・。老人のしわがれた声が男の虚ろな声が女の無関心な声が男の絶望が交錯し、お互いの領域を侵害しだし、すべて溶解し境界が不明確になる。 老人は老人であり男は男であり、同時に老人は男であり、男が老人となる。
世界は混濁とし、男の声が歪み、老人の声が歪み、男は叫ぶ。
「助けて!」
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