絵本の火/桜 葉一
世界が終わる
っていう前日に
僕は書き溜めておいた詩集を燃やすことにした
特に意味はなかったけど
自分が詩を書いていることは誰にも言ってなかったし
もしかして生き残った人が
これを見たらちょっと恥ずかしいかも
って思ったから
庭に小枝を集めて火をたいた
1枚1枚もう一度読み返してから
僕はそれを火に放り投げた
煙がモクモクと立ち昇って
世界が終わるなんてまるで感じられない青い空に消えていった
その夜は
朝と打って変わって
しとしとと雨が降り始めた
それは涙だったかもしれないし
言葉だったのかもしれない
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