絵本の火/桜 葉一
 
世界が終わる

っていう前日に
僕は書き溜めておいた詩集を燃やすことにした
特に意味はなかったけど
自分が詩を書いていることは誰にも言ってなかったし
もしかして生き残った人が
これを見たらちょっと恥ずかしいかも
って思ったから

庭に小枝を集めて火をたいた
1枚1枚もう一度読み返してから
僕はそれを火に放り投げた
煙がモクモクと立ち昇って
世界が終わるなんてまるで感じられない青い空に消えていった

その夜は
朝と打って変わって
しとしとと雨が降り始めた
それは涙だったかもしれないし
言葉だったのかもしれない


戻る   Point(1)