ブナ林にて/
山人
引き合うものもなく
昨日はただ、二人だけで仕事をしていたのだった
いつもに増して饒舌な彼は
くだらない話題を口にし
それに呼応しながら
私もつまらなすぎる人生を嗤った
霧は深くなり、やがて小雨から本降りの雨となった
急傾斜地の刈り上げた道をふたたび下ってゆく
午後からおろしたスパイク長靴は
とても良く土に食いついた
やがて雨はズボンのすそを通り
長靴の中まで侵入したころ
私たちは車のところに着いたのだった
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