恋昇り7「やさしい夢」/トビラ
「主様の言葉の通り、それ以上はシイラさんの器が壊れてしまうんだ。それでも、拝樹の奏は、人が宿せる宝の中では最高位のものなんだよ」
「そんな貴重なもの受け取れません」
私は返そうと思う。
「ああ、いいんじゃ、受け取っておくれ」
「でも……」
「いいんだよ。シイラさん。こっちには宝がたくさんあるから。主様がシイラさんに拝樹の奏を贈るのも、道端の花を一輪、シイラさんに贈るようなものだから」
主様は頷く。
「ありがとうございます。ずっとずっと、大切にします」
「ああ、もう、その言葉と想いで十分じゃ」
「主様、きいていいですか?」
「ああ。なんじゃい?」
「どうして、私に拝樹の奏を授け
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