違ってん、ひとつだけ/
木葉 揺
らいいのに
はぁあああ
はぁあああ
はぁあああ
はあああ
はぁあああ
はぁあああ
信号を渡り終え
すぽんと雑踏を抜けた
―今ひとつだけ
振り返る
「違ってん、ひとつだけ!」
思わず声に出してしまった
吐き終えた人たちは
誰も振り返らない
私は胸を押さえた後
自分の両肩を抱いてみた
はぁあああ
また誰かに煙をかけられた
予備校帰りの浪人生だ
とりあえず歩く
まばらにやってくる人々が
相変わらず
吸っていたタバコの
煙を私にかけてゆく
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