方舟ふたたび/もとこ
た
方舟の乗客たちは窓を開けて
まるで動物園の動物たちを
柵の向こうから見るように
漂流する人々を眺めていた
赤ん坊を背負った母親が
「この子だけは助けて!」と
絶叫しながら沈んでいくのを
馬鹿笑いしながら指さした
雨は神からの情報通り
400日後にピタリとやんだ
久しぶりに青空が見えた朝
方舟から一羽の鳩が放たれた
数時間後に戻ってきた鳩は
オリーブの葉をくわえていた
みんなは吉報だと喜んだが
その翌日、鳩に触れた男が
高熱を出して呆気なく死んだ
それが終わりの始まりだった
乗客たちは次々に高熱で倒れ
恐怖と混乱の中で死んでいった
最後の
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